「『燃えるもの』といえば、何をイメージしますか?」と子供達に問いかけると、
多くの子は
「木」もしくは「紙」と答えます。
人は百万年以上前から木を燃やして暖をとり、煮たり焼いたりすることで食べられる物を増やし、人を餌とする大型肉食動物から身を守って生きてきました。人類の発展に大きな影響力を与えた火。ずっと何を燃やしてきたものといえば、やはり「木」でしょう。
授業でも、まずは木を燃やすところからスタートします。
燃焼後の様子を観察したいので、集気瓶の中で木を燃やします。
しばらくすると火は消え、集気びんの中は曇ります。「このくもりは何ですか」と子供達に問うと、ちょっと迷った後で「水蒸気」と答える子が多いのですが、水蒸気ではありません。そもそも水蒸気は気体なので見えないのですから、今見えているそれは水蒸気では無いのです。このくもりは水です。
その後、石灰水を入れて振ると白くにごります。二酸化炭素も発生していたのです。
木を燃やすと水と二酸化炭素が出る。
とはいえ、アルファに通う5年生にとって、ここまではごく当たり前の結果であり、知識の確認のような部分です。
ではこの単元の主題である「金属(鉄)」を燃やすとどうなるでしょうか。
鉄(スチールウール)が燃えることは、過去に経験させているので、ここでは
「鉄が燃えると、集気びんはくもるか?」
「鉄が燃えると、石灰水はにごるか?」
と問います。どう思いますか?
さっそく実験で確かめてみます。
スチールウールは赤くなって、火花(飛び散ったスチールウール)を出して燃え、燃焼後は黒っぽくなります。
燃焼が終わっても、集気びんはくもりません。水が出ていないのです。
さらに石灰水を入れてふるのですが、白くにごる様子は全くありません。
つまり、水も二酸化炭素も出てこないのです。
そもそも、木を熱すると、どうして二酸化炭素や水が出てくるのでしょうか。
これを考える時には、木の成分を知っておかなければいけません。
木は主に、炭素と水素からできています。
この炭素と水素が、温度が高くなるとつながりを失い、酸素と結びつきます。
炭素と酸素が結びついた物は二酸化炭素。
水素と酸素が結びついた物が水(一酸化二水素)。
【 木(炭素・水素) + 酸素 → 二酸化炭素 + 水 】
だから、木が燃えると二酸化炭素と水が出てくるのです。
では鉄ならどうなのか。鉄には、炭素も水素も含まれていません。鉄は「鉄」という元素の集まりなのです。
そしてこの鉄もまた、温度が高くなると酸素と結びつこうとします。
そうして酸素と結びついた鉄が酸化鉄です。
【 鉄 + 酸素 → 酸化鉄
】
だから、鉄は燃え終わっても二酸化炭素も水も発生しないのです。
中学受験では「燃焼」は、受験では出やすい分野です。
小さい子は「燃える」ということに「火はボーボーと燃えて、熱くて、後で燃えかすが残る」といった漠然としたイメージを持っていることでしょう。これを学習を経て、燃焼反応を物質レベルで正しく理解できるようになっているかどうかが問われます。
中高で発展する分子モデルの基礎部分でもあり、質量変化も関わるので問題として深みを出すこともできます。
もし私が中学教員で問題作成者なら、子供達にどのようなことを問いたいか。そんなことを考えながら、授業を組み立てていっています。
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