銅を熱すると酸素と結びつきます。
【 銅 + 酸素 → 酸化銅 】 (※ 虹色の銅)
炭素を熱しても酸素と結びつきます。
【 炭素 + 酸素 → 二酸化炭素 】 ( →鉄が燃えると二酸化炭素は出ない?)
もし銅と炭素を同時に熱すると、当然ですが、酸化銅と二酸化炭素ができます。
ここで、もし酸素の量が限られている時はどうなるのか?
炭素と銅で、どちらが酸素に結びつく力が強いか。比較してみます。
前回の実験で作った酸化銅と炭素粉末を乳鉢で混ぜます。
酸化銅も炭素も黒いので、まざるとすぐに見分けがつかなくなります。
この混合物を試験管に入れて加熱します。試験管に入れたのは、外の酸素に触れさせないようにするためです。試験管の中に入っている酸素は、ごくわずかな気体酸素の他には、酸化銅として銅に結びついていた酸素だけです。
このせまい試験管の中で、銅と炭素が限られた酸素を奪い合います。
加熱が足りないと反応が進みませんが、必要以上に加熱しすぎると、今度は試験管がとけてしまいます。火加減が難しいところです。
充分に熱すると・・・
試験管内に赤っぽい物ができているのが見えるでしょうか。銅です。
さきほどまで酸化銅だったものが、銅に変化したのです。
なぜか。酸素を失ったからです。
この時、試験管から出てくる気体を石灰水に通すと、白くにごります。
二酸化炭素が出てきたのです。
なぜか。炭素が酸素と結びついたからです。
つまりこの時、
【 酸化銅 → 銅 + 酸素 】
という反応と
【 炭素 + 酸素 → 二酸化炭素 】
という反応が同時におこっています。
それらが合わせると、
【 酸化銅 + 炭素 → 銅 + 二酸化炭素 】
となります。
この反応はなかなか面白いです。
炭素の立場から見ると「炭素は酸素を銅から奪い取った」ことになり(酸化)、
銅の立場から見ると「銅は酸素を炭素に奪われた」ことになります(還元)。
炭素と銅で酸素を奪い合い、結果的に炭素が奪い取ったのです。
このように、限られた酸素の中で反応させることで、酸素と結びつこうとする力関係を見ることができます。
実験後「今作った銅をテキストに張って持ち帰っていいですよ。」というと子供達は大喜びします。
なんといっても子供達にとっては、金・銀・銅 ですからね。
過去5回にわたり「金属の燃焼」の分野の実験を5種類紹介してきました。
@ 鉄が燃えると二酸化炭素は出る?出ない?
A マグネシウムを燃やすと軽くなる?重くなる?
B マグネシウムは二酸化炭素の中で燃えるか?
C 虹色の銅
D 銅と炭素の奪い合い(本コラム)
これらは、中学受験する子達はテキスト上で学びますが、小学校の授業で触れることはほとんどありません。先生によっては「@鉄の燃焼」だけはやるかもしれませんが、実質的には中学2年生の学習内容です。
で、アルファではこれらを、一体どのくらいの時間をかけてやっているのか?
授業1回(120分)でこれら全てを実験します。
しかも全て子供達自身の手による実験です。
実験教室を始めたばかりの頃は、同じ時間でこれの半分も実験できませんでした。
何回も何回も授業を繰り返すうちに以下のことができるようになってきました。
●短時間でポイントをおさえた解説ができるようになった
●子供達が解説を注意深く聞いて1回で再現できるような、教室の雰囲気を作った
●実験本筋に関係のない計量や実験器具の設置など事前準備しておいた
●解説を聞いてノートをまとめているうちに、いつの間にか次の実験の準備がされている状態を作れるようになった
●解説(森)と準備(たまだ)の呼吸が合うようになった
●子供達の思わぬ行動も予期できるようになってきて失敗が無くなった
このように、短時間で解説を行い、準備・片づけなどの「待ち時間」を極限まで減らしていくことで、実験密度がどんどん上がっていきました。
アルファの生徒数が増え、同じ単元を繰り返す回数も増えたことで、授業クオリティも上がってきます。はじめは素人同然だった我々も、いつの間にか実験職人のようになってきました。
少なくとも実験ボリュームに関しては、アルファは日本で一番なのではないかと、他の教室の公開カリキュラムやテキストを見て思います。
ですから、アルファを卒業した子達には「私は日本一実験をした小学生だ」と胸を張って受験に臨み、中学生活を送ってもらいたいのです。
・・・と書いてきましたが、実は私が知らない所に、もっとすごい教室はあるかもしれません。
「アルファは2番目だね。○△実験教室はもっとすごいよ。」
という情報がありましたら、是非教えてください。
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